天馬博士とは?鉄腕アトムの生みの親、誕生日から描かれるアトムとの関係は?アトム大使、アトム復活、ミーバ

「鉄腕アトム」の天馬博士は、亡くなった息子・トビオのかわりにアトムを生み出した天才科学者。

ですが、その後アトムを手放したり取り戻そうとしたり、荒唐無稽で非道な姿が描かれます。

なにが天馬博士をそうさせるのでしょう?

ここではアトムの誕生の経緯や誕生日をはじめ、『アトム大使の巻』『アトム復活の巻』『ミーバの巻』から、天馬博士の本当の姿や性格に迫ります。

天馬博士とは? アトムを生み出した天才科学者

『鉄腕アトム』に登場する博士って? と聞かれたら、たいていの人は「お茶の水博士!」と答えますよね。

でも、天馬博士も忘れてはいけません。なにしろ彼が、アトムをつくった当事者だからです。

そのわりに天馬博士のことって、アトムとの関係も含めてあまりくわしく語られていない気がしますよね。

天馬午太郎(てんま・うまたろう)。科学省長官を務めた天才科学者としてアトムの物語に登場します。

午太郎って……。手塚先生が午年生まれ設定にしたのでしょうね。うまがいっぱいです。

天馬博士には飛雄(トビオ)という息子がいましたが、9歳くらいのとき、交通事故で亡くなってしまいます。

深く悲しんだ彼は、科学省の中にある精密機械局で、1年かけてトビオによく似たロボットをつくり出します。

そしてアトムを起動し目覚めさせた日が、2003年4月7日。有名なアトムの誕生日です。

じっさいこの日には、アトムファンたちによるたくさんのイベントが行われたそうですね。私は参加できませんでしたが、「ああ、アトムって牡羊座なんだなぁ」と思った記憶があります。

ちなみに、とある誕生日占いによると4月7日生まれの人は「科学の力で未来を拓く」のだとか。偶然とはいえ、できすぎです。まさか天馬博士、知っていたのでしょうか?

さて、天馬博士はこのあと、苦労してつくったアトムをなんとサーカスに売り飛ばしてしまいます。アトムが人間のようには成長しなかったからです。

いくら人間の息子と同じように愛したかったからとはいえ、勝手でひどいですよね。いったい、どんな性格をしているのでしょう?

その1年後にはアトムたちロボットによって自身が科学省を追い出され、その後の動向が作品群の中でもわかりにくくなってしまうのですが……。

天馬博士が登場する『アトム大使の巻』『アトム復活の巻』、そして『ミーバの巻』から、彼の本当の姿や性格を探ってみたいと思います。

 

天馬博士とアトムの原点『アトム大使の巻』とは?

『アトム大使の巻』は、「少年」の昭和26年4月号から昭和27年3月号に連載されていた長編科学漫画で、鉄腕アトムの原点ともいえる作品です。

つまり、ここに天馬博士の原点もあるといえるでしょう。彼は先述の通り、気に入らないアトムを平気でサーカスに売り飛ばすような激しい性格の持ち主として描かれています。

アトム大使とは、アトムが地球人そっくりの宇宙人との橋渡し役、つまり大使として活躍するというお話なのですが、天馬博士はここでも激しくブラックです。

宇宙人のせいで地球人の食べ物が足りなくなるからと、宇宙人の身体をゴミのように小さくしてしまう収縮薬Ⅹをこっそり開発していました。

それを、捕まえてきた宇宙人に無理やり注射するんですよ。あとに残るのは服の山だけ。なんだかもう、控えめに言っても極悪非道です。

アトムを買ったサーカスの団長にさえ、天馬ではなく「悪魔博士」なんて呼ばれていました。

どうしようもない天馬博士ですが、わかりやすい悪役であるとともに、科学の誤用について私たちに考えさせてくれる存在なのかもしれません。

それでも注目すべきは、アトムが、天馬博士を決定的に嫌ったりしていないんですよね。

アトムは善悪の見分けがつくロボットです。

それだけに博士はあとで改心するんじゃないか? そんな期待を抱いてしまいますよね。

 

天馬博士は『アトム復活の巻』でどう描かれた?

次の作品『アトム復活の巻』は、同じ「少年」の昭和41年3月号から5月号まで連載されていました。

青騎士との戦いでこわれてしまったアトムは修理のため解体されることになります。でも、生みの親の天馬博士でないと直せない。

お茶の水博士をはじめとした科学省の人たちは世界中に呼びかけ、長い間行方がわからない天馬博士からの連絡を待ちます。

ようやく現れた天馬博士は、アトムを直してやってもいいけれど、やっぱり欲しいから自分に返せと無茶な要求をするのでした。

今さら自分の子として返せって……売り飛ばしたくせに。あきれてしまいますよね。

しかし天馬博士の本当の目的は、アトムの改造でした。人間になんてもう優しくしない、それどころか「人間を従える世界の王」に仕立て上げようとしていたのです。

なにそれ、マッドサイエンティストか、という感じになってきました。

改造されたアトムは日本をめちゃくちゃに壊し、ロボットたちを解放します。そしてロボット法を無視して勝手にアフリカに向かうのでした。

天馬博士もアトムの後に続きますが、自分の子供として見ていたときの愛情などはもうまったく感じられません。野望の匂いがぷんぷんします。

でも、ちょっと待って。

天馬博士、科学を使った人間の利益の追求はもちろん、自分もロボットに従うことになるかもしれない人間だということは、すっかり忘れているようですね。

皮肉にも、こういう抜けたところは人間らしい博士です。

 

天馬博士の本当の姿、根底にあるものとは?『ミーバの巻』から探る

それにしても、ここまでみてきた天馬博士の厄介な性格って、どこからきているのでしょう?

そのヒントが『ミーバの巻』にありました。これも「少年」の昭和41年9月号から12月号に掲載されていた作品です(原題は『四次元の少年の巻』)。

生まれたてのアトムを再び手に入れ、今度こそ思い通りに自分のものにしようと考えた天馬博士は、過去を呼ぶ能力を持った瀕死の少年ミーバを捕え、アトムの誕生日である2003年4月7日にタイムリープします。

このときミーバの母親があらわれ、涙ながらに息子を助けてくれるよう懇願するのですが、博士は自分さえよければオッケーなので、けっきょくガン無視。予想通りだけど、ひどい。

いったんはアトムの誕生日に戻ったものの、うまくいかなかった博士は、今度はアトムをよこせとロボットの両親に銃を突きつけます。

アトムの両親が運命のセリフを口にしたのは、そのときでした。

「お撃ちなさい。それでアトムが奪えるならおやりなさいっ。でも私どもをこわしたってアトムはあなたの手には入りませんよ」

絶句した天馬博士の手から、銃がすべり落ちます。真の愛情を目の当たりにした彼は、一瞬で改心し、身を引くことを伝えます。

もしかしたらミーバの母親の息子を思う涙に、天馬博士の頑なな心の壁は、すでに少し崩されかけていたのかもしれません。

天馬博士って、根底に心の弱さを抱えていると私は思います。いつまでたってもトビオの喪失が受け入れられない。アトムの喪失も、自業自得だけど受け入れられない。

幸か不幸か、それを科学の力でなんとかできてしまう天才性が、残酷で厄介な性格を作り上げてしまったのではないでょうか。

この作品で二度も親の真情に触れ、あっけなく陥落した天馬博士の中には、トビオを愛した父親がたしかに残っているように感じられました。

天馬博士、ちょっとかわいそうですね。でも、このお話には救いがあるんです。

しおらしく帰りかけた博士は、敵に襲われてしまいます。それをすんでのところで救出したのが、すべてを知っているアトムでした。

「息子」に命を助けてもらい、天馬博士の改心がますます進んだかどうかはわかりませんけれど、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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